次に、この破壊的技術を用いた製品が、いかに破壊的イノベーションを生むのについてふれましょう。
破壊的技術を用いた製品が市場に投入されると、価格は相対的に安いのですが、従来型の製品に比べると圧倒的に性能や品質が低いため、主流市場からは見向きもされません。しかし、主流市場の下位市場では、その構造が単純であることや、使い勝手が良いこと、加えて価格が安いという点が評価され、低品質・低性能には眼をつぶる利用者が出てきます。これは、当初のデジタルカメラが、主流市場である一般的なカメラ利用者からは見向きもされず、どちらかというと熱心なパソコン利用者の“おたくアイテム”として市場導入された点とまさに符合します。
破壊的技術を用いた製品が市場に根を下ろすと、当然のことながら製品改良が始まります。デジタルカメラの場合で言うと、画像品質の向上です。さらに、比較的高価なイニシャル・コストの低減も課題の一つでした。こうして、製品の急激な改良が始まり、この勢いが続くと、やがて主流市場でも対応に耐える製品に成長します。こうして、破壊的技術による製品が、主流市場に受け入れられる素地ができます(図表1)。
先に見たように、破壊的技術を用いた製品の特徴は、使い勝手がよく値段が安いことです。性能や品質が従来型製品と同等になると、破壊的技術が有しているこれらの特徴が、有利に作用します。その結果、主流市場でも、破壊的技術を用いた製品を利用する人々が増えていきます。すると、破壊的技術はさらに洗練され、利用者がさらに増えるという好循環に入ります。こうして、破壊的技術を用いた製品が、やがて従来型の製品を完全にうち負かす現象が起こります。しかもこれに伴い、従来型技術を有していた優良企業が、短期間のうちに没落することも希ではありません。カメラ市場で起こったデジタルカメラ革命がまさにこの好例と言えるでしょう。
このように、破壊的技術を用いた製品が、既存の業界地図を塗り替えてしまうことを、クリステンセンは、破壊的イノベーションと呼びました。
では、破壊的イノベーション後の、現在のデジタルカメラの市場を見てみましょう。