5.いま起こっている破壊的イノベーションとは?

 興味を引くのは、単体製品としてのデジタルカメラとカメラ付き携帯電話の関係です。カメラ付き携帯電話が市場に投入されたのは2000年のことです。2005年3月時点で6637万台と、携帯電話全体の76.3%を占めるに至っています(図表2)。

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 市場投入された当時、カメラ付き携帯電話のカメラ性能は決して高いものではありませんでした。特に画像の品質は非常に悪いものでした。これは、携帯電話のあの小さなボディにカメラ機能を押し込むことを考えれば、致し方のないことだったと言えるでしょう。

 ところが現在では、300万画素を超える画像品質を持つカメラ付き携帯電話が、ごく一般的に販売されています。これは、6〜7年前における普及品デジタルカメラの中で最高品質のものと同等の画素です。プリントアウトしても、従来の銀塩写真に遜色はありません。また、記録した画像はスマートメディアに保存できることで、パソコンとの連携も便利になっています。

 このように見ると、現在のカメラ付き携帯電話は、単体製品のデジタルカメラから見ると、破壊的技術として位置づけられそうです。破壊的イノベーションで生まれた製品が、破壊的イノベーションに脅かされるのですから、なんとも皮肉な話です。今後、デジタルカメラがすべてカメラ付き携帯電話に置き換わるとは考えにくいかもしれません。しかし、①常に持っている携帯電話にカメラ機能が付いていること、②街角でシャメする人をよく見かけること、③カメラ付き携帯電話の性能がさらに向上すること、これらを考えると、単体製品のデジタルカメラを所有せずに、カメラ付き携帯電話で済ませてしまう利用者は、確実に増えるのではないでしょうか。

 また、現在進行中の破壊的イノベーションとして特記しておきたいのがIP電話です。IP電話は、インターネットで標準的に利用されているIP(インターネット・プロトコル)を用いて通話を行います。IP電話は、すでに1990年代半ばには実用化されており、当時はVoice over IP(略称VoIP)と呼ばれていました。筆者も1996年に、米のハイテク機器展示会コムデックスでVoIPのデモ体験した経験があります。

 当時のVoIPは、インターネットで利用できる電話として話題を呼びました。しかし、音声品質が悪く、会話が途切れる、うまくつながらないなど、その評価は決して芳しいものではありませんでした。VoIPは、一時的に製品の性能を引き下げるという、破壊的技術の特徴を明らかに有していたと言えるでしょう。

 その一方で、VoIPには、大きな魅力がありました。それは、従来の電話システムが必要とする電話交換機は不要で、その代わりにインターネットで標準的に利用されているルーターを使う点です。大変高価な電話交換機を用いないので、設備投資が非常に廉価に済みます。つまり、VoIPは、破壊的技術を用いた製品に見られるもう一つの特徴である、構造がシンプルで価格が安いという点を有していたわけです。

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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009