6.急激に普及するIP電話も破壊的イノベーション


 当初は、インターネットやパソコンのマニアに細々と採用されたVoIPも、その後改良が進み、大手企業の支社間を結ぶ社内電話に採用されるようになりました。これは、主流市場である一般電話の下部市場に食い込んだことを意味します。こうして、先に見た破壊的イノベーションのシナリオどおり、VoIPの改良が急速に進みます。
 その後、ADSLで一斉を風靡したヤフー!BBが、格安のVoIPサービスを開始します。これは、050番号型IP電話と呼ばれるもので、通常の電話より音質がやや劣っている点や緊急電話が掛けられないなどのデメリットがあります。しかし、価格が安いことから、一般利用者がこのサービスを利用するようになりました。つまり、下位市場から一般電話という主流市場にVoIPが姿を現したわけです。
 さらにその後、VoIPは、一般的にIP電話と呼ばれるようになり、技術改良がさらに進みます。こうして登場するのが、OABJ番号型IP電話です。これは、従来の電話と同様の音声品質を持ち、緊急電話も掛けられるというものです。現在、NTT東日本や西日本が提供している「ひかり電話」は、このOABJ番号型IP電話の代表格です。
 現在、050番号型およびOABJ型IP電話の番号数は1528万契約にも上ります(図表3)。今後、NTTでは、新世代ネットワーク(NGN)を整備して、さらなるIP電話の普及を図る予定です。このようにIP電話も、クリステンセンが指摘した破壊的イノベーションの、現在進行形の実例と言えるでしょう。
 市場を占有する企業が、破壊的イノベーションに対応できず、市場からの退場を余儀なくされることが、過去に何度も起きています。したがって、市場で大きな力を振るう企業といえども、破壊的イノベーションへの対処法を学んでおくべきです。 
 その一方で、破壊的イノベーションを生み出す活力も不可欠になります。近年話題の MOT(Management of Technology) で、イノベーションのマネジメントが重要な課題になるのも、このような背景があると見るべきです。

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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009