ポーターが一躍脚光を浴びるきっかけになったのは、彼がハーバード大学の正教授になる2年前、1980年に発表した「競争の戦略」(ダイヤモンド社)の出版によってです。同書は、世界17カ国で翻訳され、四半世紀以上たったいまでも、経営戦略論のバイブルとして読み継がれています。
この本は、「競争環境を正しく理解し、その環境が将来どのように変化するか予測し、強固な市場地位をもたらしてくれる競争の仕方を選ぶ」という点を主眼にしています。とはいえ、競争戦略の抽象的な概念論を展開しているのではありません。
原典のタイトルが「競争の戦略——業界および競合を分析するための技法」であることからもわかるように、方法論の解説に主眼を置いています。つまり、ビジネスの現場で実際に使える手法とその活用法が具体的に記されています。一般に同書は難解な書物と見られがちですが、技法解説書ととらえると、その敷居がぐんと低く感じるはずです。
同書で解説されている手法は、全部で8種類です。次の通りです。
①ファイブ・フォース(5つの競争要因)
②3つの基本戦略
③業界内部の構造分析
④競争者分析のフレームワーク
⑤マーケット・シグナル
⑥競争行動
⑦業界の進展・変化
⑧買い手と供給業者に対する戦略
この中でも、特に有名な技法が「ファイブ・フォース」と「3つの競争戦略」です。後者については、次回に解説するとして、以下、前者のファイブ・フォースについて解説しましょう。

