①新規参入の脅威
最初の分析では、あなたの業界が、どの程度新規参入の脅威にさらされているのかを調べます。
新規参入とは、業界に新たに参入する可能性のある企業を指します。そもそも、その業界に新規参入の脅威がどれくらいあるのかは、大きく2つの要素によって決まります。
ひとつは「参入障壁」の大きさです。参入障壁が大きいほど、新規参入の脅威は小さくなります。
具体的な参入障壁としては、「規模の経済」「製品差別化」「巨額の投資」「仕入れ先を変えるコスト」「流通チャネルの確保」などがあります。
もうひとつは、「既存業者の報復」です。新規参入した際に、業界内の既存業者から受ける報復が大きいと予測されるほど、新規参入の脅威は小さくなります。
したがって、参入障壁の高く、既存業者の報復も厳しい業界で、一定のポジションを確保していれば、少なくとも新規参入者に対しては、競争を優位に進められるわけです。
②既存競争業者間の敵対関係の強さ
次に、既存業者間での敵対関係を分析します。業界内の敵対関係が強くなり、結果、競争が激しさを増す要因には、さまざまなものがありますが、ポーターは次の7つの要因を掲げています。
①同業者が多いか、似た規模の会社がひしめいている
②業界の成長が遅い
③固定コスト、または在庫コストが高い
④製品差別化がないか買い手を変えるのにコストがかからない
⑤キャパシティの増加が小刻みにはできない
⑥競争業者がそれぞれ異質な戦略をもつ
⑦戦略が良ければ成果が大きい
⑧撤退障壁が大きい
これらの要因の度合いが大きくなるほど、業界内の競争は激しさを増します。こうした敵対関係の強さを決める要因は、時間の経過とともに変化することにも要注意です。
なお、上記要因の⑧撤退障壁が大きいについては、若干補足を加えておきましょう。
撤退障壁とは、既存企業に業界内からの撤退を拒む要因です。たとえば、その業種用に特化された資産は、撤退障壁の典型です。
ポーターは、この撤退障壁と、先にふれた参入障壁とをセットでとらえます(図2)。図に示したように、すでに業界に参入している企業にとっては、「参入障壁大、撤退障壁小」という環境が、最も都合が良いということになります。
③代替製品・サービスの脅威
業界とは「互いに代替可能な製品をつくっている会社の集団」と定義できます。こうした代替可能な製品やサービスが、業界の外から現れる脅威が大きいほど、業界の競争は激しくなります。これが、代替製品・サービスの脅威です。
たとえば、音楽CDと携帯電話は、まったく別物の製品です。しかし、両者を「時間を消費するツール」と見ると、相互代替可能な製品として競合することがわかります。実際、音楽CDは、携帯電話の普及によって、売り上げが落ちたと言われます。これなどは、携帯電話という代替製品の圧力により、競争が激化した結果と言えるでしょう。
ポーターは、代替品を見つけ出す行為を「現在の製品と同じ機能を果たしうる他の製品を探す」ことと定義しました。その上で、注意すべき代替品として、①現在の製品よりも価格性能比がよくなる傾向をもつ製品、②高収益を上げている業界が生産する製品を挙げています。
④買い手の交渉力
買い手とは、業界から製品やサービスを購入する者、いわば顧客を指します。買い手が業界に対して強い力を行使できるとき、その業界の競争は自ずと激化します。
ポーターは、買い手の交渉力が強くなる要因として、次の6つの要因を指摘しました。
①買い手が集中化していて、売り手の総取引量にとってかなり大量の購入をする
②買い手の購入する製品が、買い手のコストまたは購入物全体に占める割合が大きい
③取引先を変えるコストが安い
④売り手の製品が、買い手の製品やサービスの品質にとってほとんど関係ない
⑤買い手が十分な情報をもつ
⑥消費者の購入決定に影響力が行使できる場合
これらの要因が強くなると、買い手の交渉力は高まり、業者に対して値引きを強要したり、業者同士を競わせたりするようになります。
⑤売り手の交渉力
売り手とは、その業界に製品やサービスを提供する人々のことで、「供給業者」と言い換えられます。売り手の地位が高いほど、業界の競争は激しさを増します。
売り手の交渉力が高まるケースとしては、下記があります。
①売り手の方が買い手の業界より集約されている
②買い手業界が供給業者グループにとって重要な顧客ではない
③供給業者の製品が、買い手の事業にとって重要な仕入れ品である
④差別化された製品のため、他の製品に変更すると買い手のコストが増す
⑤供給業者が今後確実に川下統合に乗り出すという姿勢を示す
たとえば、パソコンのOS市場で絶大な力をもつマイクロソフト社は、パソコン製造業界に対して、明らかに上記①、③、④の要因をもっていることがわかると思います。

