2. マーケティング・ミックスの定石は「4つのP」

 では、具体的な「マーケティング・ツール=マーケティング戦術」としては、どのようなものがあるのか考えてみましょう。おそらく考え出すときりがないほどのツールを考案できるはすです。しかしながら、現代のマーケティング論では、こうした戦術を4つのグループに大分類するのが原則です。すなわち、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」がそれです(図1参照)。いずれも、頭文字にPがつくことから、これらを「マーケティングの4P」とか、単に「4P」と呼んでいます。ちなみに、この4Pをマーケティング・ツールの定石として掲げたのはコトラーではなく、マーケティング学者ジェローム・マッカーシーです。では、マーケティングの4Pについて、順に解説することにしましょう。

①Product(製品)
 最初の「Product(製品)」は、標的市場に投入する製品(有形財)やサービス(無形財)のことです。STPのポジショニングでは、標的市場に対していかなる製品やサービスを位置付けるかを明らかにしました。これはいわば、製品やサービスの“仕様”を設定したにすぎません。この仕様に従って、具体的な製品やサービスを設計するのが、4Pの最初のPに相当する「製品」です。ちなみに、ここでの製品設計は、単に機能面の設計に終始するわけではありません。ブランドやパッケージング、保証、アフターサービスなども含めた、トータルな企画が求められます。

②Price(価格)
 次に「価格(Price)」の設定です。価格とは、顧客がその製品やサービスの代償として支払うものです。一般に価格の設定では、原価に利益を上乗せする方法がとられます。しかし近年、この手法では顧客満足度を高めることが難しくなってきました。これに対して問われているのが、まず顧客が欲しがる価格帯を設定し、その価格を実現するために、上記で設定した製品の質を落とさず原価削減を徹底的に追及する方向です。この手法で著名なのがトヨタ自動車でしょう。売れる値段を設定し、これに対して徹底的に生産コストを抑えようとしたところに、いわゆるトヨタ生産方式が誕生するわけです。

③Place(流通)
 続いて「流通(Place)」ですが、こちらは製品やサービスが顧客の手元に届くまでの経路のことを指します。例えば、製造業の場合、製品は卸を経て小売店から顧客に渡ります。そして、その間を物流が取り持ちます。これらは連鎖していて、いずれかが滞ると、顧客の手元に製品やサービスが届きにくくなり、結果、顧客満足の低下を招くことになります。近年ではこうした観点から、企業が創造した価値が顧客に届くまでを供給連鎖(サプライ・チェーン)と捉え、効率的な価値提供にはサプライ・チェーン全体の効率化が不可欠と考えられています。

④Promotion(プロモーション)
 4Pの最後はプロモーション(Promotion)です。このプロモーションには「促進政策」などの訳語が用いられることがありますが、要するに製品やサービスの認知度を上げて、顧客による購入を促進させるあらゆる活動を指します。また、マーケティング・ミックスの定石が4つのグループに大別されていたように、プロモーションにも4つの大分類が存在します。すなわち、「広告」「パブリシティ(PR)」「人的販売」「セールス・プロモーション(SP)」がそれです。そして、これらを効果的に組み合わせることを「プロモーション・ミックス」と呼びます。
 そこで見てもらいたいのが、図2です。これは、企業の目的からプロモーション・ミックスまでを体系化したものです。このように図示すると、個々の企業活動は独立して存在するのではなく、「顧客の創造」という企業の根本目的を満足させるための諸機能であることがよくわかります。要するに、あらゆる企業活動は、最終的に顧客の創造へと集束されていくものなのです。


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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009