3. コトラーが提唱するマーケティングの定石を知る

 ところで、4Pのプロモーションには、直接的・間接的に多くの人が携わります。そこで、プロモーション活動を構成する4つのグループについて、もう少し詳しく解説しておくことにしましょう。

①広告
 最初は広告です。これは顧客に製品やサービスなどのメッセージを伝えるための活動です。より厳密に言うと「広告主が自らの名前を明示して、アイデアや商品、サービスその他を、人を介する以外の方法で、有料で告知すること」(米国マーケティング協会)です。
 一方、メッセージを誰かに伝えようとすると、そのメッセージを載せる乗り物、いわゆる「媒体」が不可欠になります。媒体の最も身近な例は人間自身、すなわち口頭による宣伝やクチコミでしょう。しかしながら、「人を介する以外」と断り書きがあるので、口頭による宣伝やクチコミは広告には数えられないのが普通です(とはいえ、プロモーションにとってクチコミは非常に重要で、広告、PR、人的販売、SPに次ぐ第5の要素とも考えられています)。そこでクローズアップされるのが「マス媒体」と「SP媒体」です。
 マス媒体とは「マス4媒体」とも呼ばれ、「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」がこれに相当します。また、これら4媒体以外をSP媒体と呼びます。具体的には、屋外広告や交通広告、折り込み、DM、イベントなどです。また、近年では広告媒体としてのインターネットの存在が非常に大きくなってきています。売上高ではすでにラジオを上回る規模までに成長しました。したがって、インターネットも加えて「マス5媒体」と呼ばれることもあります。

②パブリシティ(PR)
 パブリシティは、パブリック・リレーションズの略称で、PRや広報とも呼ばれます。企業が関係する様々な集団(顧客、取引先、株主、従業員、関係省庁など)と、良好な関係を維持するための諸活動です。
 PR活動で最もオーソドックスなのは、プレス(報道)対策でしょう。これは、報道各社に対して、自社の活動や新製品、新サービスなどの情報を提供する活動です。そして、それら情報を報道各社が取り上げて、新聞や雑誌への掲載、ラジオやテレビでの報道を促すものです。この活動が功を奏すると、企業メッセージの伝達に用いる媒体を無料で利用できるというメリットがあります。
 また、近年特に重視されているPRにIR(インベスター・リレーションズ)があります。これは、企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を提供して行く活動全般のことを言います。もちろん、情報提供にあたっては、時期が適切であること、公平であること、継続して実行されることなどが不可欠です。
 従来、PRは広告活動の影に隠れて地味な存在というイメージがありました。しかし、企業が不祥事を起こした時など、適切なPRがなされなかったために企業イメージがさらに悪化するという事態が、近年あちこちで見られます。したがって、今後PRの重要性はさらに高まること間違いないでしょう。

③人的販売
 人的販売とは、販売員や営業スタッフによる販売活動のことを指します。この活動で重要になるのが、セールス・レップ(販売職員)の教育と育成、そしてセールス・フォース(販売部隊)の効果的な構築です。
 セールス・レップの教育と育成では、コンピテンシー・マネジメントという手法が用いられます。これは、販売員や営業スタッフに必要な能力を明らかにし、ふさわしい人材を登用したり、その能力を高める教育プログラムを講じたりすることです。
 また、セールス・フォースの構築では、チーム・セリングをいかに実行するかが重要になります。これは、個人プレーではなく、チーム全体で販売の向上を高めようとするもので、組織的販売とも呼ばれています。組織的販売には、部門横断的な組織や情報の共有化、標準的な販売プロセスなどの確立が不可欠になります。

④セールス・プロモーション(SP)
 セールス・プロモーションはマス広告、PR、人的販売以外の、販売に関するあらゆる活動を指します。SPや販売促進と呼ばれることもあります。また、単にプロモーションと言った場合も、狭義にはSPのことを指すことがあります。
 先にも若干ふれましたが、SPには交通広告や屋外広告、折り込み、イベントなど、マス媒体以外を駆使して実行する諸活動を指します。近年では市場が細分化され、マス広告よりもきめ細やかな企業メッセージの伝達が求められています。こうした背景から、SPに対する注目が高まっています。しかし、困ったときのSP頼み、短期売上効果を狙ったSPなど、悪しき事例も見られるようになっています。

 以上、細々と解説してきましたが、いずれの活動もマーケティング・ミックスの一部であり、標的市場への企業価値提供の一環として語られるべきものです。それらは決して独立して存在するものではありません。総合的なバランスを勘案することが、よりよいマーケティング・ミックスの立案につながります。


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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009