ブルー・オーシャン戦略が、従来の経営戦力論と対立するのは、上記の点のみではありません。ブルー・オーシャン戦略を実行する際の方針にも、従来常識とされてきた経営戦略と対立する見方が見られます。
その顕著な例が、未知の市場を創造するためのポイントとして掲げる、次の2点です。
①脱セグメンテーションを目指す
②差別化および低コスト化を同時に実現する
まず、①脱セグメントを目指すですが、これは一言でいうと、フィリップ・コトラーが提唱するマーケティングの原則に反する考え方を述べたものです。また、②は再びポーター理論と真っ向から対立します。すなわち、前回紹介した「3つの競争戦略」を否定する考え方なのです。
では、①脱セグメンテーションを目指すから、キムとモボルニュの意図するところを説明しましょう。
ここで思い出したいのが、この連載でもすでにふれた、コトラーが提唱するマーケティングの最も基本となる手順です。「①調査→②セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング→③マーケティング・ミックス→④実施→⑤管理」がそれでした。
注目すべきは、手順の2番目に位置する「セグメンテーション」です。セグメンテーションとは、既存の市場に対して全体を対象とするのではなく、共通の要素をもつ集団をグループ化することでした。市場細分化とも呼ばれています。現代のマーケティングでは、このセグメンテーションを実行した上で、自社や自社の製品にふさわしいターゲットを選び出し(ターゲティング)、製品のポジションを決定すべし(ポジショニング)と説きます。つまり従来のマーケティング論に従うと、「①調査」を実行したら、次にすべきことがセグメンテーションなのです。
一方、ブルー・オーシャン戦略では、セグメンテーションを行いません。それもそのはずで、マーケティング理論が既存の市場を対象にするのに対して、ブルー・オーシャン戦略では、未知の市場全体を対象にするからです。つまり、従来型マーケティング理論で語られてきたセグメンテーションが、ブルー・オーシャン戦略では無意味になるわけです。ここでも、ブルー・オーシャン戦略が、従来常識として考えられていた理論の対極に位置することがわかると思います。

