次に、作成した戦略キャンパスを分析します。3つの価値曲線それぞれに注目してください。先に、自社、業界標準、競争相手によって、戦略プロフィールは異なるはずだと記しました。しかし、あなたが属する業界がレッド・オーシャンだとすると、3つの価値曲線の形状は確かに異なるものの、大きな違いはあまりないことに気付くはずです。これには理由があります。
レッド・オーシャンのプレーヤーは、競争相手の動きに非常に敏感です。常に競争相手をベンチマークしています。そして、競争相手が新たな動きを見せ、何らかの成功を得たら、すぐに模倣して競争相手の利益を奪う戦術に打って出ます。この結果、レッド・オーシャンでしのぎを削る企業の戦略は、おしなべて類似してきます。したがって、戦略キャンパスの価値曲線は、相互に類似した平坦なものになるわけです。
一方、ブルー・オーシャンを目指すには、競争相手を模倣するのは無意味です。模倣はレッド・オーシャンで生き残るための戦略に他なりません。ブルー・オーシャン戦略では、他者とは異なる価値曲線を描くこと、つまり競争相手とは異なる戦略を推進すること、この点が特に重要になります。
業界標準や競争相手とは異なる価値曲線を描き、新たな戦略を創造するには、大きく2つの方向が考えられるでしょう。1つは、あらゆる点において新たな市場の創造を志向する戦略です。そしてもう1つは、市場を定義している価値を問い直し、市場の境界を引き直す戦略です。
両者を比較すると、あらゆる点において新たな市場を創造する前者の方が、リスクも難度も大きいと言えるでしょう。一方、後者は、市場を再定義する方向とも言い換えられ、現状の市場から出発するため、あらゆる業界での応用がききます。ブルー・オーシャン戦略では、未開拓の市場空間の創造を目指すものの、この「市場の境界を引き直す」という、後者の戦略に大きな注意を払います。そして、再定義した市場で、差別化と低コスト化を両立したバリュー・イノベーションを引き起こそうとします。
ブルー・オーシャン戦略では、市場の境界を引き直す際に、いまだ顧客になっていない買い手(非顧客)に目を向けることを重要視します。既存の市場を相手にするということは、既存の買い手を相手にすることと等価です。一方、既存の市場に存在しない買い手を相手にするということは、既存の市場の枠組みを一旦取り払って、買い手を見直す行為に他なりません。これがうまく機能すれば、市場の境界を引き直すことが可能になるでしょう。
さらに、市場の境界を引き直すには、次のようなアプローチも重要になります。すなわち、
①代替産業に学ぶ
②業界内の他の戦略グループに学ぶ
③買い手グループに目を向ける
④補完材や補完サービスを見渡す
⑤機能志向と完成志向を切り替える
⑥将来を見通す
以上の6つです。キムとモボルニュは、これを「6つのパス」と呼んでいます。
したがって、「非顧客+6つのパス」の視点で、現在、あなたが属する業界にはない新たな価値を発見します。そして、その価値を実現することで、顧客の高い満足を引き出すことに成功すれば、他社との差別化をはかれるに違いありません。このように、「非顧客+6つのパス」で物事を見るということは、新たな戦略の方向性を考える作業に他ならないのです。

