このように考えてくると、キャズムを上手に飛び越えるには、追随者であるアーリー・マジョリティの攻略が欠かせないということが分かります。この点に関してムーアは、いくつかの対策を指摘しています。
最重要ポイントとしてムーアが掲げるのが、一般市場全体を相手にするのではなく、将来的に波及効果のあるニッチ市場を見付け出し、そこに力を集中するということです。そして、ニッチ市場を占拠したら、ここを橋頭堡にして一般市場の攻略をはかるという戦略です。
さらにムーアは、ニッチ市場を攻略する3つの手法を挙げています(図3参照)。
①ホール・プロダクトによる梃子の原理
②口コミ効果
③マーケットにおけるリーダーシップ
ホール・プロダクトとは、顧客の目的を達成するための、一揃いの製品やサービスのことです。アーリー・アダプターならば、新製品に足りない機能があったとしても、自分で補う努力をします。しかし、追随者はそんなことはしません。ですから、顧客に面倒をかけるようにしないためにも、ホール・プロダクトが欠かせなくなります。
口コミによる評判が広がるよう努めることも重要です。これは新たな製品を導入する際、口コミに頼る追随者が多数を占めるからです。以前、この連載で紹介したマーケティングの4Pの一つであるプロモーションは、広告、広報、人的販売、SPの4要素から成るとするのが一般的な考え方です。一方近年では、この4要素に口コミを加えて5要素にするという考え方が台頭してきています。ムーアの指摘は、まさにこの流れに沿ったものといえるでしょう。
最後のマーケットにおけるリーダーシップとは、文字通り選択したニッチ市場でトップ企業を目指すということです。これは、追随者が業界ナンバー1から製品を購入するという習慣があるからです。つまり、ニッチ市場でのナンバー1を看板に、周辺市場を攻略するわけです。
以上がキャズムに陥らないための基本的な手法です。ハイテク業界のマーケティングに携わる人々には不可欠の考え方と言えるでしょう。また、ハイテク以外の業界でも、ムーアの提唱するキャズム理論を応用する余地は大いにあると思います。ぜひ、あなたのビジネスに活用いただければと思います。

