生産生向上という言葉を聞くと、多くの人はトヨタ生産方式(トヨタ・プロダクション・システム/TPS)を、真っ先に頭に思い浮かべることでしょう。その中でも、ジャスト・イン・タイムやかんばん方式、カイゼンはあまりにも有名です。
一方、制約理論(または制約条件理論)という言葉を聞かれたことはありますか? これはTheory of Constraintsのことで、略称TOCとも呼ばれています。これは、システムの制約条件、(最も弱い部分=ボトルネック)を見つけ出し、これを継続的に改善するももので、その効果はトヨタ生産方式にも比肩するといわれるものです。
制約理論を提唱したのは、イスラエル人エリヤフ・ゴールドラットです。元々が物理学者だったゴールドラットは、生産管理のためのスケジューリング・ソフト「OPT」を開発したことから、ビジネスの世界に足を踏み入れます。この「OPT」は、生産スケジュールに関する根本的な考え方が、従来のものとは大きく異なっていました。これが制約理論に他なりません。
そして、この制約理論を分かりやすく解説するために、ゴールドラットは『ザ・ゴール』を著します。1984年にアメリカで出版されると、同書は爆発的な売れ行きをみせ、この本に書いてあることを実行することで、成果を上げる企業が次々と現れたとさえ言われています。
ところが、日本語版が発刊されたのは、本国出版後17年もたった2001年のことです(版元はダイヤモンド社)。これは、制約理論が日本で広まると、日本の産業がさらに強力になるという危惧から、ゴールドラットが日本語版の出版を見合わせていたと噂されています。
ゴールドラットは『ザ・ゴール』の中で、制約条件を継続的に改善する手法を、5つのステップに凝縮しました。これが「集中の5段階」と呼ばれるものです(図表1)。
①システムの制約条件を見つける
②制約条件を徹底活用する
③制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
④制約条件の能力を高める
⑤制約条件が解消された、惰性を避けて①に戻る
集中の5段階は、システムの中にある制約条件に意識を集中し、これを継続的に改善するためのプロセスを示したものです。この考えは、制約理論の基本ともいえる、極めて重要なパートを担います。
●図表1 集中の5段階