2.全体最適化には制約条件の改善が欠かせない

 以下、集中の5段階の各ステップについて解説し、ゴールドラットの指摘する制約理論の全貌を紹介しましょう。ですが、その前に、なぜ制約条件を継続的に改善することが大切なのか、この点にふれるのが、制約理論を筋道立てて説明する上での順序でしょう。

 ゴールドラットは、ボトルネック改善の重要性を説明するのに、よく鎖のアナロジーを引き合いに出します。ここでも、ゴールドラットに倣って、鎖のアナロジーを利用することにしましょう。

 ここに一本の鎖があります。この鎖の強さ、すなわちパフォーマンスは、いったい何によって決まるのでしょうか。言うまでもありません、鎖を構成する輪の中で一番弱い部分です。強く引っ張られた鎖は、強度が一番弱い部分で断ち切れるはずです。これは、他の部分がどれだけ強い輪で構成されていても同じです。輪の一番弱い部分を補強しない限り、鎖全体のパフォーマンスを向上することはできません。この一番弱い部分が「制約条件」です。

 一方、鎖のパフォーマンスを向上させるため、制約条件以外の輪の強化をはかったとします。しかし、一番弱い輪の強度は改善していないので、鎖全体のパフォーマンスはまったく向上しません。制約条件以外の輪の強化をはかったにもかかわらずです(図表2)。この例のように、制約条件以外のパフォーマンス改善に努めることを、ゴールドラットは「部分最適化」と呼びました。

 では次に、一番弱い輪の強度を1.2倍にしたとします。それでも、この輪が全体の中で一番弱い箇所だとしたら、鎖全体のパフォーマンスは1.2倍になるはずです。ゴールドラットは、こうしたシステム全体のパフォーマンス向上を「全体最適化」と呼びます。

 このように、鎖というシステムのパフォーマンスは、「一番弱い輪=制約条件」に依存しています。したがって、制約条件を改善しない限り、鎖=システムのパフォーマンスは向上しないというわけです。制約理論が、制約条件に注目する理由は、ここにあります。

●図表2 鎖のアナロジー
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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009