4.集中の5段階で継続的改善を実現する

 全体最適化を実現するには、制約条件の改善がポイントになることを理解してもらえたと思います。では、全体最適化を実現するための具体的な手順である「集中の5段階」について、以下、順に解説していくことにしましょう。

①システムの制約条件を見つける
 すでに見たように、制約理論では、システム全体のパフォーマンス向上を目指すために制約条件に着目し、それを改善します。となると、まずはシステムの中に潜む、制約条件を探し出すことが重要になります。これが「集中の5段階」の第1ステップです。

 制約条件には、①物理的制約条件、②市場の制約条件、③方針の制約条件」の3タイプがあると、ゴールドラットは言います(図表3)。

●図表3 制約条件の3つのタイプ
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 ①物理的制約条件は、装置や設備、人的リソースに起因するものです。一方、②市場の制約条件は、需要や顧客などの市場要因が制約条件になるものです。代表的な市場の制約条件は、市場の需要よりも生産能力が大きいときです。こうしたケースでは、マーケティング政策の変更や市場のセグメント化が不可欠になります。

 さらに、③方針の制約条件は、会社の方針や慣習が制約条件になるというものです。例えば、部分最適化をベースにしたルールなどは、制約理論の見地からすると、方針の制約条件以外の何ものでもありません。また、年功序列主義や学閥主義といった社内の暗黙のルールも、方針の制約条件になりがちです。ゴールドラットは、制約条件の多くが「方針の制約条件」であると述べていますが、充分留意したいものです。

②制約条件を徹底活用する
 制約条件がシステム全体のパフォーマンスを決定することは、先に見たとおりです。これは、言い換えると、制約条件の能力が低下すると、システム全体のパフォーマンス低下に、ダイレクトで影響を及ぼすことを意味します。

 したがって、制約条件がもつ可能性を十二分に引き出して、無駄な使われ方をしないようにすることが重要になります。そして、無駄遣いしない方法を決定するのが、「集中の5段階」、その第2ステップにあたる「制約条件を徹底活用する」です。

 ゴールドラットは、制約条件の可能性を最大限に引き出すための具体的手法として、「制約条件に入る不良品を減らす」「いま必要な製品だけ造る」「間違った手順や方針を改める」「利益を最大限にする製品を造る」などを指摘しています。要するに、ボトルネックのパフォーマンスを、それ以上落とさないことが、第2ステップのポイントになります。

③制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
 第3のステップは、ステップ②で決めた方針に、システムの全要素を従わせる段階です。「制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる段階」と表現してもよいでしょう。

 この段階では大きな問題の発生がつきものになります。というのも、非制約条件を制約条件に従わせると、非制約条件のパフォーマンスが大きく落ちたように見えるからです。

 たとえば、ある工場の工程は、1日に15個の部品を製造する能力を有します。しかし、これを組み込む半製品の製造工程がボトルネックで、1日の製造個数が10個だとします。この場合、部品製造の工程は、1日15個の製造能力を1日10個に落とさなければなりません。これは、本来の生産能力の2/3にしか過ぎません。部分最適化の見地からすると、これはとんでもないことのように映ります。

 しかし、部品製造工程のパフォーマンスを最大化したところで、工場全体のパフォーマンスは上がりません。逆に、部品の仕掛品が滞留することになります。すなわち、無駄な在庫を抱えることに等しく、システムにとって好ましくありません。

 よって、第3ステップでは、部分的なパフォーマンスが低下しても、制約条件に合わせてシステム全体の最適化を断行します。これは、部分最適化を排除して、全体最適化に向かわせる段階でもあるわけです。

④制約条件の能力を高める
 第2ステップ「制約条件の徹底活用」では、制約条件が持つ能力を最大限に引き出すようにしました。一方、第4ステップでは、制約条件の能力を引き上げることに主眼が置かれています。

 つまり、第4ステップでは、制約条件の能力は、すでに最大限引き出されている、という点が前提になります。その上で制約条件の能力を高めるわけです。したがってこの段階では、新たな装置などを導入して制約条件のパフォーマンスを高めたり、制約条件のキャパシティの一部を他の非制約条件に負担させたりするなどの措置をとることになります。

⑤制約条件が解消されたら、惰性を避けて①に戻る
 第4ステップで制約条件の能力を高めました。システムのパフォーマンスは制約条件に依存するわけですから、制約条件の能力を高めることで、システムのパフォーマンスも制約条件の能力一杯に向上するはずです。

 ところが、必ずしもそうならない場合があります。先の例でいうと、制約条件だった半製品の製造工程のパフォーマンスが劇的に高まり、1日18個製造できるようなったとします。しかし、部品の製造工程は1日15個のままだとしたら、この工場では1日15個の製品しか作れません。つまり、部品の製造工程が新たなボトルネックになったわけです。

 これを理解せずに、工場のパフォーマンスは18個/日だと誤解して生産計画を立てると、とんでもないことになります。ゴールドラットに言わせると、これは「ものぐさや怠惰から、制約条件への集中を忘れた結果」です。したがって、初心に帰ってステップ①に戻り、再度、制約条件を探し出し、徹底的に活用し、他を従属させ、能力を高めるという、一連のステップを実行しなければなりません。

 このように制約理論は、継続的改善活動でシステムのパフォーマンスを常に向上させることを目的とします。それもこれも、会社の「ザ・ゴール」である「現在そして将来にわたって、より多くのお金を儲けること」を、より満足させるためのものなのです。

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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009