4. 企業の唯一の目的は顧客の創造

 次に、社会の中で最も多く見られる組織としての企業に、マネジメントの範囲を特化してみよう。マネジメントは組織に成果を上げさせるために存在する。では、組織としての企業を考えた場合、企業はいったいどのような成果を上げるべきなのか。

 この問いに対してドラッカーは、少々意外な回答を示す。「顧客の創造」こそが、企業が上げるべき成果、すなわち企業の目的だと、ドラッカーは位置づけるのだ。

 組織の一形態である企業は、明らかに社会的機関の一員だ。そのため、社会やコミュニティ、顧客のニーズを満足させるために存在する。つまり、誰かしらのニーズを満足させ続けること、すなわち「顧客の創造」が企業の目的になるわけだ。しかもドラッカーは、これが企業の目的についての妥当な唯一の定義だと強調する。

 もっとも、先に見た組織一般の場合と同様、ひとつの企業がすべてのニーズに対応できるわけではない。そのため、個々の企業は、特定のニーズに的を絞り込む必要がある。たとえば、「豊かな食生活」とか「老後の安心した暮らし」とかがそれだ。このように、個々の企業が、特定されたニーズに対応する意思を表明したものを「ミッション」と呼ぶ。

 以上から、次の点が明らかになるだろう。つまり、「個々の企業がそのミッションを通して顧客創造を達成するための道具、機能、機関」こそが、企業にとってのマネジメントになるわけだ。そして、組織の目的と成果に貢献する人は、誰であれその組織のマネジメントの一員になる。決して経営のトップ層だけが、マネジメントではないのだ。

 さらに、もうひとつ明らかになることがある。それは、もはや何のニーズも満足させられない企業は、早晩市場から退場しなければならないということだ。もっともこれは、民間企業に限ったことではない。他の組織、たとえば政府や自治体、特殊法人などについても同様だ。特に問題なのが、もはや何のニーズにも応えられなくなった組織は、とかく組織の維持それ自体が目的になりがちだという点だ。このような組織が、社会的なお荷物になっている例は、枚挙にいとまがない。

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© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2009