第2講 
ドラッカーの流儀を活用せよ!
成果を上げるための自己マネジメント

『これでわかるビジネス戦略講座[1]』収録


CONTENTS

目標を実現するために、 考えるべき3つのポイント

ドラッカーは言った、 汝の強みを知れ

ドラッカーは言った、 汝の時間を知れ

ドラッカーは言った、 汝、集中せよ

ドラッカーは言った、 汝、誠実であれ



目標を実現するために、

考えるべき3つのポイント


 本講座「No.001 これだけは知っておきたい“ドラッカーのマネジメント論”」では、ドラッカーのマネジメント論の基本について解説しました。

 本稿では、それを踏まえた上で、個々のマネジャーが、個々の仕事において、いかに成果を上げるのか、その具体的手法について、ドラッカーの考えを活用しながら説明します。いわば、「ドラッカー流成果を上げるための自己マネジメント」の解説です。

 成果を上げるための自己マネジメントで最も重要になるのは、「目標と自己管理によるマネジメント(目標管理)」です。目標管理とは、組織の目標を前提に自らの部門や自分自身の貢献を明らかにし、それを部門や自身の目標として設定するものです。

 目標を設定することは、目標達成のための強い動機付けになります。また、設定した目標を基準にして、自己の仕事の結果を評価できるという利点もあります。さらには、目標を明らかにすることで他のメンバーとのコミュニケーションも円滑になります。このように、目標管理にはさまざまなメリットがあるということは、「No.001 これだけは知っておきたい“ドラッカーのマネジメント論”」にもふれた通りです。下記にポイントを図解しておきましょう(図表1)。


図表 1 目標管理のメリット

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 しかし、目標を設定するだけで、成果が上がるというわけではありません。目標達成のための、たゆまぬ努力が不可欠なのは言うまでもありません。とはいえ、がむしゃらに目標に向かうのも考え物です。それ以前に、効率よく目標を達成するために工夫する、すなわち智恵を使うことが重要です。汗を流すことはとても大切なことですが、汗を流す前に、まず、考えよということです。

 では、目標を達成するために、何について考えてみるべきなのでしょうか。それには三つあるとドラッカーは言います。①強み、②時間、③集中がそれです。以下、これら三つについて考えることで、円滑な目標達成のための具体的手法を明らかにしたいと思います。

ドラッカーは言った、

汝の強みを知れ

 ドラッカーの名著の一つに『創造する経営者』があります。ドラッカーはこの中で、「事業とは、市場において、知識という資源を経済価値に転換するプロセス 」と指摘しています。

 ここでいう「知識」は、技術や技能、能力など、極めて広い概念を指します。そしてドラッカーは、組織がもつ知識を、顧客が代価を支払ってでも欲しくなる経済価値に変えることが、事業の本質だと断言します。

 となると、事業を成功させようとするならば、他とは異なる卓越した知識が不可欠になります。というのも、卓越した知識は、顧客が進んで代価を支払うような経済価値に転換できる可能性が高まるからです。

 同じことが、企業のみならず個人についても言えるはずです。企業にとって卓越性が必要なように、個人にとっても卓越性、言い換えるならば「強み」が不可欠になります。

 そもそも自分の弱みで何かを成し遂げることはできません。成果を上げるには、自分の強みを徹底的に活かすことが欠かせません。となると、自分の強みが何なのか、この点について知ることが、成果を上げるために極めて重要になります。

 この点についてドラッカーは、多くの人が自分の強みが何なのかを理解していない、と指摘しています。つまり、自分の強みだと考えていたことが全くの弱みであったり、全く意識していなかった能力が自分の強みであったりすることが、往々にしてあるというのです。したがって、まずは先入観を捨てて、自分の強みを分析するのが得策になります。

 ドラッカーは、自分の強みを知る具体的な手法として「フィードバック分析」の活用を勧めます。これは、何かを意思決定する際に、それに対して何を期待するのかを書き留めておき、9ヶ月後や1年後に期待と現実を比較検証し、そこから自分の強みを探り出す手法です。

 フィードバック分析を実行すると、自分が行った優れた仕事、一生懸命やらなかった仕事、お粗末な仕事が把握できます。そして、自分の強みや、強みを発揮する上で邪魔になるもの、自分の弱点、全くできないことなどが明らかになってきます。

 そして分析結果が出たら、引き続き次のことを実行します。明らかになった強みを、目標達成に向けて集中的に活用します。さらに、悪癖や人への接し方など、悪習慣を改善します。加えて、極力苦手な分野の仕事はしないなどの無駄の排除、逆に言うと強みへの集中を強化します。

 強みの分析には若干時間が必要ですが、自分の強みを把握する上で、ぜひ、実行されることをお勧めします。




ドラッカーは言った、

汝の時間を知れ


 自分の強みの分析と同様、時間の分析も、成果を上げるための自己マネジメントに欠かせません。

 1日24時間は、誰にとっても等しいものです。足りない時間を他人から借りたり、購入したりはできません。もちろん余った時間を貸し出すことも不可能です。

 また、時間に対するニーズが大きくても、供給量が増えるわけではありません。常に一定であり硬直的です。加えて、こうした融通の利かない時間は、あらゆることに必要とされます。すなわち、万人にとって平等かつ貴重な資源、それが時間なのです。

 このような時間を有効に使えるか否かは、個々人が目標を達成する上で、極めて重要なポイントになります。となると、貴重な資源である時間をどのように使っているか、この点を明らかにして適切に管理することが欠かせなくなります。

 この点に対してドラッカーは、「ドラッカー流時管理術」とでも呼べる手法を紹介しています。このテクニックは、①分析、②管理、③まとめる、という3ステップからなるものです(図表2)。


図表 2 ドラッカー流時間管理術

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 まず、①分析ですが、ここでは自分の時間がいかに使われているかを検証します。そのために、時間の使われ方を記録することが、ここで行う最初の活動になります。具体的には、2~3週間程度を目処に、自分の行動を記録します。その際、自分で記録しても、他人に記録してもらっても構いません。ただし、必ずリアルタイムで記録するよう心掛けます。つまり、記憶に頼る記録は避けるのがポイントです。

 時間の使われ方を記録したら、その中から次に掲げる三つの仕事を特定します。まず、時間を浪費する仕事の特定です。その代表は、無駄な会議や打ち合わせでしょう。これらについては削除を前提に取り組みます。

 次に、自分がやらなくてもよい仕事、すなわち他の人でもできる仕事の特定です。このような仕事は、別の適切な人物に移譲するようにします。そして最後は、他人の時間を浪費させている仕事の特定です。そして、このような活動があれば、当然排除するよう努めます。

 このように、①時間を浪費する仕事は削除、②他の人でもできる仕事は移譲、③浪費させている他人の時間は排除、という三つの視点で、不必要な仕事を特定し、分類管理します。これが第②ステップの管理です。

 以上の活動で、非生産的活動に使われていた時間が、自ずと余ってきます。一方で、小さな成果を上げる場合でも、細切れの時間を使って仕事をしていては、よい成果は得られません。成果を上げようとするならば、ある程度まとまった時間に集中して仕事をすることが不可欠です。したがって、最後のステップである③まとめるでは、自由になった時間をひとまとめにして、生産的活動に割り振ります。

 以上、①分析、②管理、③まとめるの順で、細切れだった時間をひとまとめにすること、これも目標達成のためにか欠かせない活動です。時間は誰にとっても平等です。ドラッカー流時間管理術を活用して、万人の貴重な資源たる時間をうまくマネジメントしたいものです。


ドラッカーは言った、

汝、集中せよ


 成果を上げるべき目標を明らかにしました。また、自分の強みも理解し、時間も充分に管理しました。最後に重要になるのが「集中」です。

 年末や年度末など、忙しいシーズンをイメージしてみてください。こういうときには、同時に複数のことをやりがちです。しかし、皆さんもいままでの経験からご承知のように、一度に複数のことを実行しようとすると、どれも中途半端になり、余計時間がかかるという結果になりがちです。ここから得られる教訓は、一つのことだけに集中した方が結局は効率的だということです。これは成果を上げるための大原則と言えます。

 ところで、先のドラッカー流時間管理術を実行することで、自由になる時間を確保し、それをひとまとめにすることができました。一方、一度に複数のことをするのは非効率であり、一つのことに集中することが成果を上げる大原則だということも確認しました。となると、確保した貴重な時間を、いずれの仕事に割り振るかが課題になります。言い換えると、仕事の優先順位を決めることが重要になるということです。

 ドラッカーはこの点に関しても、具体的な示唆を我々に与えてくれます。体系的廃棄と優先順位の決定がそれです。

 体系的廃棄とは、①現在実行しているものについて改善策を考える、②成功しているものについては応用法を考案する、③古くさくなったものを捨て、新しく違ったものを考案する、という一連の活動でした(No.001参照)。

 ここで言う体系的廃棄とは、この考え方を個人の仕事に適用しようというものです。この活動の中で特に重要になるのが、③古くさくなったものを捨てる活動です。

 ③では、現在行っていることを実行していないと仮定し、いまからでも実行するかを検討します。そして、いまからは実行しないと結論づけたものについては、即座に廃棄します。体系的廃棄を実行することで、すでに役目を終えた仕事がなくなります。結果、残るのは必ずしなければならない仕事だけ、ということになるわけです。

 次に実行するのが、優先順位の決定です。すなわち、体系的廃棄後に残った仕事について、何を優先するのか、その順位を明らかにします。

 優先順位を決めるにあたっては、明確な基準が不可欠です。ドラッカーは次の四つの点を念頭にして、自分の仕事に優先順位を付けよ、と述べています。

 第1に、「過去でなく未来を選ぶ」ということです。誰しも過去の成功というものは忘れられないものです。しかし、大きな成果を目指すならば、まずは未来に目の向いた仕事に高い優先順位を割り振るべきです。

 第2は、「問題ではなく機会に焦点を合わせる」ということです。問題が生じた案件の処理も必要です。しかしそれよりも、成功の機会に焦点を合わせ、それに関連する仕事を優先するようにします。

 第3は、「横並びではなく独自の方向を決める」ということです。前例がこうだとか、他の部署はこうだとかよりも、独自の方向を築ける仕事に高い優先順位を割り振ります。

 そして最後は、「変革をもたらすものに焦点を合わせる」ということです。時間は直線的に進みます。滞留もしなければ後戻りもしません。そのような中、いま効果のある物事も、やがて陳腐化します。この考えを前提に、常に新しいこと、現在のやり方に変革をもたらすこと、このような仕事に高い優先順位を割り当てます。

 以上を念頭に、自分の仕事に優先順位を付けていきます。その上で、ひとまとめにした時間に、優先順位の高い仕事を強制的に割り振ります。そして、一時に一つのことに集中し、優先順位の高い仕事から順に、一つ一つこなしていくのです。

 成果を上げるためには、まず目標を設定することが大切です。そして、設定した目標を達成するためには、自分自身の強みを知るとともに、時間を分析管理します。そして、自分の仕事に優先順位を決め、ひとまとめにした時間に、優先順位の高い仕事から順に割り当てて、一つのことに集中して仕事をします。手短にまとめると、以上がドラッカー流成果を上げるための自己マネジメントと言えます(図表3)。


図表 3 フィードバック分析の活用

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ドラッカーは言った、

汝、誠実であれ


 ドラッカーは著作『経営者の条件』の中で、次のようなことを言っています。「成果をあげることは、修得はできるが、教わることはできない。つまるところ、成果をあげることは、教科ではなく自己修練である 」と。言い換えると、目標管理、強みの分析、時間管理、集中を自己修練することが、成果を上げる人になるための道だということです。

 とはいえ、成果さえ上げれば立派なマネジャーになれるわけではありません。本稿では、成果を上げるための、いわば具体的手法について解説してきました。しかし、このような技巧以前に、マネジャーとして不可欠な要素があります。それは、仕事に対する誠実さ、真摯さです。

 あなたの部下が不誠実な人間ならば、あなたは彼と働くのが嫌なはずです。同様に、あなたが不誠実な人ならば、上司も部下も、あなたと行動を共にしないでしょう。

 ドラッカーは、不誠実さ、真摯さの欠如した典型として、次のような人を挙げています。


 ①人の長所より短所に目を向ける人

 ②何が正しいかより誰が正しいかに興味がある人

 ③誠実さより頭の良さを重視する人

 ④優秀な部下に脅威を感じる人

 ⑤自分の仕事に高い基準を設けない人


 今回、解説したドラッカー流自己マネジメントの具体的手法と並行して、上記のような人間にはならぬよう、お互い注意したいものです。






参考文献

P・F・ドラッカー著、上田惇生訳『【新訳】創造する経営者』(1995年、ダイヤモンド社)

P・F・ドラッカー著、野田一夫、村上恒夫監訳『マネジメント(上)』(1974年、ダイヤモンド社)

ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳『【新訳】経営者の条件』(1995年、ダイヤモンド社)

中野明 『ピーター・F・ドラッカーの「自己実現論」がわかる本』(2006年、秀和システム)


© Akira Nakano pcatwork.com 1999~2016