2014年6月24日
【はじめにより】
第二次世界大戦後、農業から工業へと大量の労働者が移行しました。並行して起こったのが核家族化であり、さらにこれは個人主義化へと進みます。しかし個を徹底して重視する人であっても、社会との関係を取り結ばなければなりません。なぜなら、ほかの人との関係なしに人は社会生活を営めないからです。
そのため人は個の存在を社会に示し、社会の一員として認めてもらわなければなりません。ところが、社会が複雑になるなかで、誰もが自分の望んだように社会との関係を結べるわけではありません。競争に心身ともに消耗し、理不尽に我慢を強いられ、あるいは深い挫折を
味わうこともあるでしょう。
しかしそれでも人は社会の一員として生きなければならない。このジレンマを解消するヒントはないのか──。これがアルフレッド・アドラーの提唱した理論、中でも「共同体感覚」に求められ、現在のアドラー人気が生まれたのではないでしょうか。
もっとも本書は、いまアドラーが注目される背景を解明することを目的にしているのではありません。フロイトやユングの名前くらいは知っているが、いったいアドラーとはどのような主張をした人物なのか──。このような疑問を持つ方のために書いたものです。
【目次】
Chapter1 アドラー心理学とは何か
1-1 アドラー心理学の基本的な態度とは何か
1-2 「勇気の心理学」と呼ばれるのはなぜか
1-3 個人心理学の生みの親アドラーの生涯
1-4 アドラーと同時代を生きた人々
1-5 アドラー心理学とドラッカー理論の共通点
1-6 「7つの習慣」がアドラー心理学から受けた影響
コラム アドラーの妻ライザ
Chapter2 アドラー心理学のカギ「劣等感」
2-1 アドラーはなぜ「劣等感」に注目したのか
2-2 アドラー心理学における「劣等感」の重要性はどこにあるか
2-3 劣等感が個人に果たす役割とは
2-4 劣等感が負の方向に作用するとどうなるのか
2-5 優越コンプレックスと劣等感に関わりはあるのか
2-6 劣等コンプレックスに陥らないようにするには
コラム フロイトからの招待状
Chapter3 人間の生き方を決める「ライフスタイル」
3-1 アドラー心理学が持つ目的論の特徴とは
3-2 人は固有の目標やライフスタイルをいかに形成するのか
3-3 甘やかされて育った人のライフスタイルとは
3-4 自分のライフスタイルを見つめ直すにはどうすべきか
3-5 間違ったライフスタイルは変えられるのか
3-6 ライフスタイルの修正を阻むものは何か
3-7 私たちの生き方は「トラウマ」によって決まるのか
コラム アドラーの早期回想
Chapter4 アドラーが提唱した「共同体感覚」とは
4-1 「入会地の悲劇」で破綻する社会を考えてみよう
4-2 アドラーが提唱した「共同体感覚」は何を意味するのか
4-3 アドラーが分類した四つのパーソナリティとはいかなるものか
4-4 「社会に有用な人」になるための具体的な行動とは
4-5 相手をかけがえのない仲間ととらえるにはどうすべきか
4-6 私たちはいかに共同体の利益に貢献すべきなのか
4-7 利己的な経営者はどうやって人間らしくなったか
コラム 共同体感覚に驚いた人々
Chapter5 取り組むべき「人生の三つの課題」
5-1 私たちが生きる上で取り組むべき課題とは
5-2 社会と良好な関係を結ぶためには何をすべきか
5-3 友人を作るためのとっておきの方法はあるのだろうか
5-4 私たちは仕事とどのようにつき合うべきか
5-5 経済学が主張する比較優位は本当に正しいのか
5-6 自分の強みを見つけるに何をすべきか ……
5-7 パートナーとの愛になぜ共同体感覚が必要なのか
コラム 子供の扱いがうまかったアドラー
Chapter6 今を生きる“武器”としての「勇気の心理学」
6-1 アドラーが採用した心理療法とはどのようなものか
6-2 アドラーが用いた勇気づけとはどのようなものだったのか
6-3 甘やかしから人を解放する「自然の結末」とは何か
6-4 「勇気くじき」にはどのようなタイプがあるのか
6-5 自分自身を勇気づけるにはどうすべきか
6-6 詰まるところ人生の意味とは何か
6-7 アドラー心理学で「地球人」になる
コラム アドラーとニジンスキー