2011年5月4日
【はじめにより】
ある著名な外食チェーン経営者が、テレビ番組に出演し、その中で自身の座右の書を紹介していました。ほかでもありません。マイケル・E・ポーター著『競争の戦略』がそれです。
同書はいまからすでに30年以上も前の1980年に出版され、以来、経営戦略論のバイブルと称されてきました。そして、いまでも経営戦略を学ぶ者たちの必読書になっています。
ただ、そのページ数は500ページ近くにおよび、内容も難解なため、読了困難な書籍の一つとしても有名です。
『競争の戦略』は、タイトルからも若干想像がつくように、企業活動を「競争」ととらえ、この競争をいかに優位に進めるかについて書かれてあります。とはいえ、競争戦略の抽象的な概念論を展開しているのではありません。
原典のサブタイトルは「業界および競合を分析するための技法」となっており、方法論の解説に主眼を置いています。
つまり、ビジネスの現場で実際に使える手法とその活用法を具体的に記した本だということです。
先にもふれたように、『競争の戦略』は、難解な書物と見られがちですが、「技法解説書」としてとらえると、その敷居もグンと低く感じるはずです。 *
この『競争の戦略』の中で、とくに有名なコンセプトが「ファイブ・フォース」と「三つの基本戦略」です。
前者の「ファイブ・フォース」は、企業を取り巻く外部環境を分析するための枠組み(フレームワーク)です。そして後者の「三つの基本戦略」は、長期的に見た競争戦略の基本タイプについて解説しています。これらは、ポーターの競争戦略論でも、もっとも基本となる考え方です。
一方、ポーターは、『競争の戦略』発表から5年後に、姉妹書『競争優位の戦略』を出版しています。この著作では、おもに企業の内部環境を分析するための手法として「バリュー・チェーン」を掲げました。
『競争の戦略』に加え『競争優位の戦略』がポーターの競争戦略論の根底をなしている著作です。そして、両書で扱われている技法を活用すれば、企業の外部環境と内部環境を分析して、適切な競争戦略を立案できます。
そして、その方法を、図版を使いながらわかりやすく紹介したのが本書にほかなりません。
【目次】
序章 『競争の戦略』を自分のものにするために
第1章 「ファイブ・フォース」のつかまえ方
第2章 競争に勝つための「三つの基本戦略」
第3章 競争環境を徹底的に分析する
第4章 業界の行く末について考える
第5章 総合戦略を立案する